榎本レディースクリニックは生駒市の婦人科です。

更年期障害・漢方

更年期とは

更年期とは、閉経前後の約10年間を指します。更年期の「更」には、変わるという意味があります。
閉経を迎え、からだが大きく変わるのが「更年期」です。

月経は、卵巣から「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンが周期的に分泌されて起こりますが卵巣から分泌される女性ホルモンは年齢と共に変化します。
40代前半から卵巣の働きが衰え、50歳くらいで女性ホルモンはほとんど分泌されなくなり、閉経を迎えます。
すると脳は、「なんで卵巣は働かないのだ!」と 混乱します。女性ホルモン中枢は、自律神経の中枢と同じ部分にあるので、この混乱は、自律神経にも悪影響を及ぼします。

自律神経は体温、発汗、脈拍、血圧など全身の働きを調節しているので、自律神経のバランスが乱れると、その症状は全身にあらわれます。
つまり、更年期には、女性ホルモンの欠乏によって生じる不調と、自律神経のバランスの乱れによって生じる不調が同時に生じます。

更年期障害に悩む女性
エストロゲン
女性のからだを成熟させ、骨を強くしたり、皮膚のハリとツヤを出したり、善玉コレステロールを増やしたりする働きがあります。
プロゲステロン
子宮内膜を受精卵が着床しやすいように整え、妊娠を助ける働きがあります。
これらの女性ホルモンは、脳の女性ホルモン中枢で調節されています。
症状

のぼせやほてり、動悸、肩こり、腰痛、頭痛、便秘下痢、手足の冷え、めまい、頻尿、不眠、憂鬱、イライラなど多岐にわたります。

検査
問診
現在の体の状態や症状などを確認し、治療の説明や希望をお伺いします。
血液検査
女性ホルモン検査(卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体形成ホルモン(LH)・エストラジオール)、甲状腺機能検査、一般血液検査
子宮がん検査
超音波検査

「簡略更年期指数(SMI)」自己チェック表

症状の程度に応じて点数を合計していき、その合計点をもとにチェックします。どれか1つの症状でも強くでれば「強」を選択して下さい。

更年期指数の自己採点の評価法

  • 0~25点
    上手に更年期を過ごしています。 これまでの生活態度を続けて良いでしょう。
  • 26~50点
    食事、運動などに注意をはらい、 生活様式などにも無理をしないようにしましょう。
  • 51~65点
    医師の診察を受け、生活指導、カウンセリング、薬物療法を受けた方が良いでしょう。
  • 66~80点
    長期間(半年以上)の計画的な治療が必要でしょう。
  • 81~100点
    各科の精密検査を受け、 更年期障害のみである場合は、 専門医で長期の計画的な対応が必要でしょう。
症状
顔がほてる 10 6 3 0
汗をかきやすい 10 6 3 0
腰や手足が冷えやすい 14 9 5 0
息切れ、動悸がする 12 8 4 0
寝つきが悪い、または眠りが浅い 14 9 5 0
怒りやすく、すぐイライラする 12 8 4 0
くよくよしたり、憂うつになることがある 7 5 3 0
頭痛、めまい、吐き気がよくある 7 5 3 0
疲れやすい 7 4 2 0
屑こり、腰痛、手足の痛みがある 7 5 3 0

治療法について

HRT療法

西洋医学における、更年期症状の一般的な治療法に、ホルモン補充療法(HRT)や低用量ピルがあります。これは、減少した女性ホルモンを補充する治療法です。
閉経前の更年期の不調には、低用量ピルの飲み薬を処方するのが一般的です。
ただし、乳がんや子宮がんの心配のある人、血栓症や心筋梗塞になったことがある人、たばこを吸う人、腎臓や心臓、肝機能が悪い人、高血圧の人、片頭痛のある人などにはピルを使えません。

閉経後の更年期の不調の場合は、低用量ピルよりホルモン量が少ないホルモン補充療法(HRT)に切り替えます。

HRTでは、不足したエストロゲンを補うので、エストロゲン不足で引き起こされるさまざまな更年期の症状が楽になります。
それとともに、ホットフラッシュや動悸など、自律神経失調の症状もよくなります。

HRTは飲み薬のほか、皮膚に貼って使うパッチ剤や、皮膚に塗るゲル剤などの種類があります。

ただ、HRTにもデメリットがあります。HRTは、不安やうつ状態などこころの症状にはあまり効果がありません。また5年以上続けると、乳がんの危険性が少し高まってきます。
不正出血や月経前のような乳房の張り、むくみや吐き気のような症状が起こることもあります。

そこで、HRTを試したいけれど、乳がんのリスクが心配という人や、こころの症状が強い人などには、漢方をおすすめします。

漢方療法

年をとっていくからだを、不自然に若返らせるのではなく、自然に、その年齢に応じた元気さで老いていくように導くのが漢方医学の考え方です。

気血水の異常

「気」の異常
  • 気虚→無気力やだるさなど。
  • 気滞・気うつ→頭重、息苦しさや不安など。
  • 気逆→冷えのぼせや動悸など。
「血」の異常
  • 血虚→貧血、肌の乾燥など。
  • 瘀血(おけつ)→月経の異常、肩こり、便秘など。
「水」の異常
  • 水毒・水滞→むくみ、めまい、頭痛、下痢や排尿異常など。

生命活動エネルギー
気力・活力

物質面で支える
身体材料・血肉

体を潤すもの
水分・体液

気血水の循環で体のバランスは維持される

未病を治す

西洋医学は、病名がつかないと治療の対象としませんが、漢方では病名がつかなくても、不調があって放っておくと将来病気になりかねないという状態を「未病」と呼び、治療の対象とします。
治療においては、漢方薬で、自然治癒力を高めて、その人が本来持っている機能を回復させ、症状の原因となるバランスの崩れを整えて、体質を改善していきます。
更年期のように、病気ではないけれど不調が出ている場合に、漢方薬はぴったりなのです。

ひとつの漢方薬で複数の効果が見込める

更年期世代の女性は、食欲がない、気力がわかない、情緒不安定、熟睡できない、ふらふらする、耳鳴りがする、肩こり、頭痛、冷えなど、いくつもの症状で困っていることがほとんどです。
この場合、西洋医学だと、胃薬、精神安定剤、睡眠導入剤、抗うつ剤、めまいの薬、鎮痛剤と、複数の薬を処方されることになります。

一方、漢方医学では、根本原因から改善していくので、一つの漢方薬でも複数の症状の改善が期待できます。

からだとこころ、環境をひとつのものとしてとらえる

西洋医学では、からだを臓器別にとらえて診ていきます。これに対して、漢方は心身一如、からだとこころをひとつのものとしてとらえ、からだ全体を見渡す医学です。

更年期世代は、子供の巣立ち、夫婦関係の変化、親の介護など生活環境の変化に伴うストレスも多く、それが症状を引き起こす原因になります。漢方では、その人のおかれた環境やもともとの体質も配慮して治療をしていきます。

更年期は、老年期への曲がり角に差し掛かる不安定な時期。この年代に出るいろいろな症状は西洋医学のように臓器別にとらえるのではなく、心身一如という視点で、全体を見なければなりません。崩れたバランスを元に戻す、柔らかく温かい治療が必要です。だから漢方がよいのです。

プラセンタ治療

プラセンタとは、英語で胎盤のこと。胎児の発育に必要不可欠なものです。
プラセンタの最大の特徴として「自然治癒力」の増大があり、体の不調を慢性化させない自然薬として注目をあつめています。

更年期障害の緩和には、プラセンタの持つホルモンを調整する内分泌調整作用や、自律神経のバランスを調整する自律神経調整作用などが役立っていると考えられます。

さらに、これに漢方薬を併用する場合もあります。
更年期障害の治療で用いるプラセンタ注射については健康保険が適応される場合があります。

  • プラセンタ療法の保険適応は更年期障害と診断された概ね45歳~59歳までの女性です。
  • 定期的にフォローアップ検査を受けていただきます。
  • その他、美容目的などの場合は自費診療となります。

プラセンタ注射「メルスモン」「ラエンネック」は特定生物由来製品にあたり、同意書にサインをいただいております。

エクオール療法

大豆は女性ホルモンのエストロゲンとよく似た働きの成分を含むため、女性の元気と若々しさを保つのに役立つと言われてきました。

最近、その働きの元になっているのが「エクオール」という物質であることがわかりました。
大豆の中のイソフラボンという成分が、腸内細菌によって「エクオール」に変わり、エストロゲンによく似た女性の健康パワーとなっていたのです。

エクオールを食品化したものを使った実証研究では、ホットフラッシュ(多汗)や肩こりを中心に、更年期症状を改善するという結果が出ています。

特に最近では、更年期症状をやわらげるほか、骨粗しょう症の予防と改善・皮膚や血管の健康を保つなど、ミドルエイジ女性の健康維持について良い効果が期待されています。

エクオールの含まれている大豆
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