性感染症(STI:Sexually Transmitted Infections)とは、性行為で感染する病気の総称です。
自覚症状が乏しい疾患もあり、自分が感染していることに気づかず他人に感染させてしまうことがあります。なかには放置しておくと不妊の原因になるものや、身体に重大なダメージを与えるものもあります。
おりものの変化や臭いなど、気になる症状がある時はすぐに診察を受けるようにしましょう。
近年、女性がかかるSTIの中で最も頻度が高い疾患です。
男女ともに自覚症状を認めないことが多く、放置されやすいため感染が長期化し、子宮や卵巣にまで炎症が広がり、不妊の原因になることがあります。また、咽頭への感染も増えてきています。
1~3週間の潜伏期間で発症します。おりものの増加、不正出血や下腹部痛などが挙げられますが、ほとんど気づかないことが多いです。
進行すると子宮内膜炎や卵管炎などを引き起こし、卵管を通じて腹腔内へ移行すると激しい上腹部痛を伴うこともあります。
おもに抗菌薬を服用します。治療後2~3週間あけて、治癒判定の検査をします。
パートナーも同時に検査・治療を行うことが重要です。
クラミジア感染症に次いで多くみられるSTIです。
男性は排尿痛や尿道口から膿が出るなどの症状が出ますが、女性では自覚症状が少なく気づきにくい場合が多いです。
しかし、感染に気づかず放置しておくと、子宮や腹腔内へと炎症が広がり、不妊症の原因になることもあります。
また、クラミジアと淋菌は重複感染することがあります。
2~10日の潜伏期間で発症します。異臭のある黄色い膿のようなおりものが増え、排尿痛を起こすこともありますが、症状が軽いため気づきにくいです。進行すると、発熱や激しい下腹部痛が起こります。
抗菌薬の服用で治療をしますが、耐性菌が増えており、注射か点滴で治療することが多くなっています。
パートナーも同時に検査・治療を行うことが重要です。
単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症です。一度感染すると、仙髄神経節に潜伏感染し、ストレスや免疫力が低下した時に、たびたび活性化し再発を繰り返します。
2~10日間の潜伏期間で発症します。外陰部に疼痛を伴う水疱や潰瘍ができ、ときに38℃以上の発熱がみられます。激しい痛みのため、排尿や歩行か困難になることもあります。
抗ウイルス薬の服用や、外用薬を用いますが、症状が強い場合は点滴治療を行います。
ヒト・パピローマウイルス(HPV)による感染症です。再発しやすいため、治療後も3カ月は経過観察を行いましょう。
約3週間から8カ月(平均約3カ月)の潜伏期間で発症します。外陰部や会陰部の周囲に痛みのない先の尖ったイボが発生します。鶏冠やカリフラワーのような状態になることもあります。
外用薬の塗布。電気焼灼など外科的治療を行うこともあります。
梅毒トレポネーマによる感染症です。性的な接触(粘膜や皮膚と直接接触すること)などが主な感染経路となっています。
早期の治療で完治が可能です。
感染から2~3週間後に痛みのない固いしこりができ、感染から約3カ月後には全身に赤い発疹などが現れます。
ペニシリン系抗菌薬を服用します。
パートナーも同時に検査・治療を行うことが重要です。
膣トリコモナス原虫による感染症です。性行為での感染がほとんどですが、浴場、便座、下着、タオルなどからでも感染することがあります。性交渉のない女性や幼児にも感染がみられることもあります。
5~28日間の潜伏期間で発症します。黄色く泡立つおりものが増え、悪臭を伴います。
外陰部にかゆみと焼けつくような痛みを感じます。
膣錠や内服薬を服用します。
パートナーも同時に検査・治療を行うことが重要です。
常在菌であるカンジダ菌(カビの一種)によっておこる性器の炎症です。性行為の有無にかかわらず、 疲れやストレスなどで抵抗力が落ちたり、抗生剤の服用後などにも発症します。また、再発しやすい疾患でもあります。
白い酒カス状のおりものが増え、外陰部に激しいかゆみを感じます。
膣の中を洗浄後に膣錠を挿入し、外用薬の処方をします。